












チーズ、果物、魚、揚げ物、甘い飲み物…。
私たちがふだん何気なく口にしている食べものたちは、実はおなかの中に住む「腸内細菌」と、想像以上に深く、密接につながっています。
今回ご紹介するのは、チーズ大国として知られるフランスで行われた大規模な研究結果です。実は、「チーズをよく食べる人ほど、腸内に住む特定の「痩せ菌」が少ない」という、ちょっと意外な傾向が見えてきました。
「発酵食品は腸に良いはずなのに、なぜ?」そんな素朴な疑問を入り口に、今回の研究から見えてきた「食卓と腸内細菌の不思議な関係」を詳しく紐解いていきましょう。
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01チーズ大国で調べられた、食事と腸内フローラの関係


食卓に並ぶ食品ごとに、腸内細菌との関係をチェック
この研究はフランスで行われた大規模なプロジェクトの一部で、健康な成人862人を対象にしています。
参加者は、普段の食事を尋ねる「食物摂取頻度調査(FFQ)」に回答し、どの食品群をどのくらいの頻度でとっているかを記録しました。同時に便を採取して腸内細菌を解析し、それぞれの腸にどのような菌がどのくらいいるのかを調べました。
この研究で調査された主な食品群をご紹介します。
<食品群>
生の果物、野菜、魚、揚げ物、砂糖入り飲料(ソーダなど)、脂質の多い甘い食品、加工肉、惣菜・レトルト食品、デザート、チーズ
ここで大切なのは、この研究は「ある食品を◯週間食べさせて腸内細菌がどう変わったか」を調べる試験ではなく、「普段の食事パターンが違う人たちの腸内フローラに、どんな違いが見えるか」を調査した点です。つまり「Aという食品をよく食べる人では、Bという菌が多い(少ない)という傾向がある」という結果になります。

腸内細菌は、食品のイメージどおりに動かない?
私たちの頭の中には、「これは健康に良さそう(プラス)」「これは控えたい(マイナス)」といった食品に対する一般的なイメージがあります。今回の研究結果は、そのイメージと重なるところもあれば、少し意外なズレを見せるところもありました。
・イメージ通り:生の果物や魚をよく食べる人は、腸内細菌の種類が豊富で、菌の分布に偏りが少ない状態(多様性が高い)にありました。
・イメージ通り:揚げ物や砂糖入り飲料、加工肉、惣菜、デザートなどをよくとる人は、多様性が低い傾向が見られました。
一方で、チーズは「発酵食品で腸に良さそう」という一般的なイメージを持たれやすいのに対し、健康に関連して注目されている「アッカーマンシア」菌の少なさと関連していました。こうした“一般的なイメージとのズレ”は、複雑な腸内細菌の世界を読み解く面白さでもあります。
02
02発酵食品なのに?チーズと"痩せ菌"の意外な結果


注目されたのは、アッカーマンシア・ムシニフィラ
アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)は、腸の粘液層(ムチン)を分解しながら生きる、最近になって注目度が一気に高まった菌です。
動物実験やヒトを対象とした研究では、

肥満、2型糖尿病、脂質異常症などの代謝性疾患がある人では少なくなりがち

一方で、健康な人や、体重・代謝状態が良好な人では多い傾向
と報告され、「代謝に良い働きをする可能性がある“次世代の有用菌”」と考えられています。
アッカーマンシアは、食欲を抑制するホルモンであるGLP-1などの分泌にも影響することから、一般には「痩せ菌」としてメディアで紹介されることが多くなりました。腸内フローラ検査の「chatFLORA G」でも、「痩せ菌」に関連する菌として検査項目に含まれています。
チーズをよく食べる人で少ない傾向が見られた
そんな「良い菌」の代表格とも言えるアッカーマンシアですが、今回のフランスの研究では、興味深い結果が出ました。「チーズをよく食べる人ほど、アッカーマンシア・ムシニフィラが少ない傾向にあった」のです。
「発酵食品であるチーズを食べているのに、なぜ有用菌が少ないの?」と不思議に思われるかもしれません。ここで、この結果を正しく理解するための重要なポイントを整理しておきましょう。

直接的な原因ではない:この研究は「チーズがアッカーマンシアを減らす原因だ」と証明したものではなく、「チーズを多く食べる人では、この菌が少ない」という関連が見られたものです。

食事全体のパターンの影響:チーズを多く食べる人は、同時にワインをたくさん飲んでいたり、パンや肉料理を多く食べていたりと、特定の食事パターンを持っている可能性があります。また、チーズの種類(熟成の進んだハードタイプか、フレッシュなソフトタイプか)や、脂肪分の量、運動習慣なども複雑に絡み合っていると考えられます。
しかし、「チーズ=痩せ菌を減らす食べもの」と決めつけるのは早計です。大切なのは、「一般的な食品のイメージと腸内細菌との関連は、必ずしも一致しない」という点で、これが研究論文の面白さでもあります。

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03果物と魚をよく食べる人は、腸内細菌の顔ぶれが豊かだった?


この研究の中で、特定の菌だけでなく腸内フローラ全体の「豊かさ」についても調査されました。ここでキーワードとなるのが「多様性」です。
生の果物と魚に見られたプラスの関係
同じ862人のデータを分析した結果、「生の果物」と「魚」は、調べた3つの指標すべてで腸内フローラの多様性の高さと関連していました。
つまり、生の果物や魚を日常的によく食べている人ほど、腸内細菌の「α(アルファ)多様性」が高い傾向にあったのです。
ほかの研究でも、野菜、果物、穀物、魚などをバランスよく取り入れる食事パターンと、腸内細菌の多様性との関連が報告されています。これは、厚生労働省などが推奨している「バランスの良い食事」という公的な食事指針とも重なります。
腸内細菌の"多様性"ってなに?
ここで、何度も出てくる「多様性」という言葉について、少し詳しく解説しましょう。「α多様性」とは、簡単に言うと「一人ひとりの腸内に、どれくらい多くの種類の菌がいて、どのくらいバランスよく住んでいるか」を表す指標です。
例えば、以下の2人を比べてみましょう。

Aさん(多様性が高い): 100種類の菌がいて、それぞれの菌がバランスよく分布している。

Bさん(多様性が低い): 10種類程度の菌がほとんどを占めていて、他の菌はごくわずかしかいない。
腸内細菌の世界では、Aさんのような「多様性が高い」状態が、より健康的であると考えられています。一方で、特定の菌だけが偏って増えすぎたり、逆に菌の種類が極端に少なかったりする状態(多様性が低い状態)は、肥満や糖尿病、炎症性疾患など、さまざまな健康上のトラブルと関連していることが、多くの研究で指摘されています。
chatFLORA Gでは、この多様性を「菌の豊富さ」や「菌の偏り」という指標で数値化しています。レポートに示された数値は、「腸内環境の豊かさ」を測る健康指標になります。

04
04揚げ物や甘い飲み物では、反対の傾向も


腸内細菌の多様性の低さと関連していた食品
同じ研究では、以下の食品群が腸内細菌の多様性の低さと関連していることが報告されています。
<α多様性の低さと関連していた食品群>
揚げ物、ソーダなどの砂糖入り飲料、脂質の多い甘い食品、加工肉、惣菜、デザート
これらには、砂糖入り飲料や加工肉、惣菜など、超加工食品に分類されることの多い食品が含まれます。超加工食品は、一般にカロリーが高く、食物繊維や一部の微量栄養素が少ない傾向があります。
西洋型の食事パターンや慢性的な炎症との関わりも指摘されており、今回の結果は、こうした食品に偏らない食生活を考えるヒントになります。
西洋型の食事パターンや慢性的な炎症との関わりも指摘されており、腸内細菌の視点からも「こうした食品に偏った食生活は、多様性が下がる傾向がある」という点は、腸の健康を保つ大切なヒントになります。
同じ食事でも、食品グループごとに菌との関係は違う
興味深いのは、「食事」という大きな枠組みの中でも、腸内細菌との関係は食品によって異なるという点です。同じテーブルの上に、

生の果物や魚(多様性とプラスに関連)

揚げ物や砂糖入り飲料、加工肉、デザート(多様性とマイナスに関連)
が並んでいる光景を思い浮かべると、「食卓と腸内フローラの関係は、かなり複雑だな」と感じられるかもしれません。
さらに、今回の主役である「チーズ」のように、「発酵食品だからといって、全ての有用菌を増やすとは限らない」という複雑さもあります。

どんな菌で発酵させているか

どのように加工されているか

他の栄養素(食物繊維など)と一緒に摂っているか
こうした細かな違いによって、菌たちの反応は変わります。腸内細菌の世界は、私たちが思う以上に奥深く、多様性に満ちています。

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05まとめ:食卓と腸内細菌は、思った以上につながっている


フランスの健康な大人862人を対象にした今回の研究では、普段の食事パターンと腸内フローラとの間に、いくつもの興味深い関連が見えてきました。

生の果物や魚をよく食べる人は、腸内細菌のα多様性が高い傾向

揚げ物や砂糖入り飲料、加工肉などが多い人は、多様性が低い傾向

チーズをよく食べる人では、注目のアッカーマンシア(痩せ菌)が少ない傾向
こうした結果は、日常の食卓の選択が、腸内細菌の顔ぶれと密接に繋がっていることを改めて伝えてくれます。
ただし、これらは「この食品が100%良い」「この食品が100%悪い」という単純な善悪の結論ではありません。腸内細菌の状態は、食品の種類だけでなく、調理法、組み合わせ、そして普段の生活習慣が重なり合った結果でもあるからです。
腸内フローラ検査「chatFLORA G」の検査結果には、
痩せ菌(アッカーマンシア)
短鎖脂肪酸をつくる菌たち
女性の健康をサポートするエクオール産生菌
など、多くの興味深い項目が並んでいます。
これらの数値も、世界中で日々行われている膨大な研究データに基づいています。
「自分の検査結果に出ていたこの菌は、世界の研究の中ではこんなふうに扱われているのか」といった発見が、腸内フローラ研究を“自分ごと”として楽しむきっかけになればと思います。




















