












急な下痢で困ったとき、まず優先したいのは水分と電解質の補給です。下痢では水分や電解質が失われるため、脱水を防ぐことが大切です。食欲が戻れば、一律に絶食する必要もありません。米国NIDDK(国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所)も「急性の下痢では絶食をすすめない」「食べたいと思えるようになったら、たいていは普段の食事に戻してよい」としています。
ただし、血便や黒いタール状の便、強い腹痛、水分を飲んでも吐いてしまう、尿がほとんど出ないといった症状がある場合は、食事の工夫だけで様子を見ず、早めに医療機関へ相談してください。
この記事では成人の一般的な急性下痢を対象に、水分補給や飲み物の選び方、食べてよいもの・控えたいもの、受診の目安、回復期の食事の戻し方を解説します。
注意:乳幼児・小児には成人向けの食事例をそのまま当てはめないでください。
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01下痢のときは水分補給を優先し、食べられるなら絶食しなくてよい


下痢では水分と電解質が失われるため、水分補給を優先することが大切です。一方、下痢のときの食事については、食べられる状態であれば一律に絶食する必要はありません。
日本の『JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015―腸管感染症―』でも、「下痢を呈している際の食事に対する制限は不要であり、経口摂取出来る場合は経口摂取を推奨する」と、推奨度A・エビデンスレベルI(ランダム化比較試験)で示されています。また、成人の急性下痢の治療をまとめた総説でも、経口補水と早期の食事再開を組み合わせる方法が望ましいとされています。「下痢になったら24時間は絶食する」という考え方は、現在の一般的な方針ではありません。
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02下痢のときの水分補給|何をどう飲む?


吐き気があるときは、少量ずつこまめに水分補給する
吐き気があるときに水分を一気に飲むと、吐いてしまい十分な水分補給ができないことがあります。まずは一口ずつ、数分おきに少しずつ飲み、吐き気が落ち着いてきたら量を増やしましょう。飲み物は冷やしすぎず、常温から少し冷たい程度のほうが飲みやすい場合もあります。
ただし、水分を飲んでも吐いてしまう、尿がほとんど出ない、立ちくらみがある、顔色が悪く元気がないといった場合は、自宅での水分補給にこだわらず、速やかに医療機関へ相談してください。感染性胃腸炎の多くは水分補給などの対症療法が中心ですが、脱水がひどい場合には点滴などの輸液が必要になることもあります。
脱水時の経口補水液はスポーツドリンクと別物
経口補水液は、脱水症の食事療法に用いる「病者用の飲み物」で、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態に水分と電解質を補給する目的で使われます。ナトリウムとブドウ糖の比率や浸透圧が調整され、下痢中でもはたらく小腸のナトリウム・ブドウ糖共輸送を利用して、水分と電解質を吸収しやすいよう設計されています。
スポーツドリンクとは組成や用途が異なり、脱水がない場合の水分補給にはスポーツドリンクでもよい一方、軽度〜中等度の脱水では経口補水液のほうが有用とされています。また、成人のウイルス性胃腸炎を対象とした研究では、スポーツドリンクでも脱水や便の症状は改善しましたが、スポーツドリンク群では低カリウム血症が解消せず残る人が比較的多くみられました。ただし、経口補水液は日常的な水分補給用ではありません。必要かどうかは医師・管理栄養士・薬剤師などに相談し、特に塩分やカリウムなどの摂取制限がある方は指示に沿って使用しましょう。

飲み物 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
水・白湯 | 脱水がない時期の基本の補給 | 電解質は補えないため食事や汁物と組み合わせる |
経口補水液 | 下痢・嘔吐に伴う脱水状態のとき | 日常の水分補給用ではない。Na・K制限がある人は医師に相談 |
脂肪の少ないスープ・みそ汁 | 食欲が戻り始めた時期 | 塩分のとりすぎに注意し、油の多いものは避ける |
スポーツドリンク | 脱水所見がない時期の水分補給 | 経口補水液の代わりにはならない。糖分が多い製品もある |
果汁飲料・炭酸飲料・甘い飲料 | 症状が落ち着いてから少量で | 単純糖質が多く症状を悪化させることがある |
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03下痢のときに食べてよいもの


食欲がなければ無理に食べず、水分を確保する
下痢で食欲がないときは、無理に食事をとる必要はありません。まずは水分と電解質の補給を優先し、食べられそうになったら少しずつ食事を再開しましょう。一回の食事量を普段の半分程度にして回数を分けると、胃腸への負担を抑えやすくなります。時間を決めて絶食する必要はありませんが、丸1日以上ほとんど食べられない、水分も十分にとれない場合は、医療機関を受診してください。
食べられる範囲で、脂肪が少なく刺激の弱い食事から再開する
下痢が落ち着いて食事を再開するときは、脂肪が少なく、胃腸への刺激が弱いものが選びやすいでしょう。おかゆや白米、油を控えたうどん、食パン、脂肪の少ないスープなどを少量から試し、体調や便の状態を見ながら、少しずつ量と種類を普段の食事へ戻していきます。特定の食品を食べれば下痢が治るわけではなく、ここで挙げるのは、あくまで下痢のときに食べやすい食品の例です。
区分 | 食べやすい例 | 取り入れ方 |
|---|---|---|
主食 | おかゆ、やわらかいご飯、うどん、食パン | 少量から始め、様子を見て普段の量へ |
汁物 | 具の少ないみそ汁、野菜のスープ | 水分と塩分を同時に補える |
おかず | 豆腐、白身魚、卵、脂肪の少ない鶏肉、煮た野菜 | 蒸す・煮るなど油を控えた調理で |
果物・乳製品 | バナナなど食べやすい果物、乳糖の少ない製品 | 食べたあとの症状を見ながら判断 |

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04下痢のときに避けたい食べ物・飲み物


脂っこいもの・刺激の強いもの・アルコール・カフェイン
NIDDKは、下痢の症状を悪化させる可能性があるものとして、アルコール、カフェイン(コーヒー・茶・一部の清涼飲料)、揚げ物やピザなどの高脂肪食を挙げています。香辛料の強い料理も、症状がある間は控えたほうがよいでしょう。これらは腸を傷つけるのではなく、下痢を悪化させる可能性があるためです。症状が治まるまでは控え、回復に合わせて普段の食事に戻します。カフェイン飲料は、白湯や麦茶などに置き換えるとよいでしょう。
糖分の多い飲料・果汁飲料・炭酸飲料・糖アルコール
果糖や乳糖などの単純糖質を多く含む甘い飲料、果汁飲料、菓子類に加え、糖アルコールを使ったシュガーレスガムやキャンディーも、下痢の症状がある間は控えたいものに挙げられています。ただし、ゼロカロリー食品や飲料を一律に避ける必要はありません。糖アルコールなどの成分表示を確認し、症状への影響を見ながら選びましょう。
牛乳や乳製品は、飲むと悪化する場合に控える
急性下痢の最中は、乳糖を含む牛乳や乳製品を控えることがすすめられる場合があります。下痢から回復した後も、1か月以上にわたり乳糖を消化しにくい状態が続く人もいます。
一方、成人の細菌性胃腸炎後を3〜6か月追跡した研究では、この状態が長く続くことは確認されませんでした。すべての人が乳製品を避ける必要はないため、食後の症状を見ながら判断すれば十分です。乳幼児は、母乳やミルクを自己判断で中止しないでください。
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05食事で様子を見ず、医療機関へ相談したい症状


早急な受診が必要なサイン
水分を飲んでも吐いてしまう、尿が極端に少ない、強い口の渇きがある、立ちくらみやめまいがする、意識や様子に変化がある、腹部や肛門に強い痛みがある、血液や膿の混じった便、黒いタール状の便が出るといった場合は、食事の工夫だけで様子を見ず、早急に医療機関へ相談してください。特に重い脱水症状や意識の変化がある場合は、救急受診を検討しましょう。
下痢が長引く場合や重症化しやすい人も早めに相談する
成人では、下痢が2日を超えて改善しない、1日に6回以上の軟便や水様便がある、高熱がある場合も医療機関への相談がすすめられます。妊娠中、65歳以上、免疫機能が低下している方、抗菌薬を使用中の方は特に注意が必要です。乳幼児は成人の受診目安をそのまま当てはめず、早めに医療機関へ相談してください。下痢の日数だけで我慢せず、不安な場合も早めに相談しましょう。なお、成人の急な水様便では、水分補給を行ったうえで市販の下痢止めを使える場合もあります。ただし、発熱や血便がある場合は、腸の動きを抑えるタイプの下痢止めを自己判断で使用せず、医療機関に相談してください。
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06回復期の食事はどう戻す?


症状が落ち着いたら、食べられる範囲で普段の食事へ
下痢が治まってきたからといって、おかゆやパンだけの食事を長く続ける必要はありません。食欲が戻ったら、少しずつ普段の食事に戻し、食べると症状が悪化するものは様子を見ながら再開します。決まった日程や段階に沿って戻すよりも、症状の変化に合わせて調整するほうが現実的です。油の多い料理やアルコールは、便の状態が安定してから再開すると安心です。

軟便や便通の乱れが続くときは、食事と便の状態を記録する
下痢の回復後も軟便や便通の乱れが続く場合は、食べたもの、食事の時刻、症状、便の状態などを数日分メモしておくと、医療機関を受診した際の説明に役立ちます。便の形は7段階で分類するブリストルスケールを使うと、便の状態を伝えやすくなります。軟便が続く原因や、下痢と便秘を繰り返す場合については、関連記事で詳しく確認してください。
FAQ
よくある質問
下痢のときは、おかゆだけにした方がよい?
おかゆは下痢のときにも食べやすい選択肢ですが、おかゆだけに限定する必要はありません。下痢だからといって食事を厳しく制限する必要はなく、食欲や症状に合わせて、少しずつ普段の食事へ戻していきます。
下痢のときにヨーグルトを食べてもよい?
ヨーグルトは、下痢のときに一律にすすめたり禁止したりする食品ではありません。急性下痢の後は乳糖を消化しにくくなり、乳製品で症状が悪化する人もいるため、食べる場合は少量から試して、食後の症状を確認しましょう。気になる場合は、下痢の症状が落ち着いてから再開すれば十分です。ただし、ヨーグルトを食べれば下痢が治るわけではありません。
下痢のとき、スポーツドリンクは経口補水液の代わりになる?
スポーツドリンクと経口補水液は同じものではありません。脱水がある場合は、下痢や嘔吐による脱水状態に用いる経口補水液を選び、用途や使用上の注意を確認することが大切です。持病などでナトリウムやカリウムの摂取制限がある場合は、医師や管理栄養士に相談して使用しましょう。
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07下痢が治まったあと、普段の便通と食生活を振り返ろう


下痢の症状が長引いたり、繰り返したりする場合は、まず医療機関に相談することが優先です。そのうえで症状が落ち着いたら、普段の便通や食生活を見直す材料として、腸内フローラ検査を活用する方法もあります。
chatFLORA Gでは「便秘・下痢」カテゴリで、便形状タイプに応じたレポートや、便秘関連菌・下痢軟便関連菌が多いか少ないか、結果に応じたおすすめ食材・栄養素・行動習慣の提案を確認できます。
ただし、急性下痢の原因を診断したり、下痢の治療や再発防止を約束したりする検査ではありません。日々の便の状態や食事の記録と組み合わせ、今後の食生活や生活習慣を見直すためのヒントとして活用してください。
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08まとめ|下痢のときは水分補給を優先し、食べられる範囲で食事を戻そう


下痢のときは、まず水分と電解質の補給を優先することが大切です。吐き気がある場合は少量ずつこまめに飲み、脱水があるときは経口補水液の使用を検討します。食事は一律に絶食する必要はなく、食欲が戻ったら、脂肪や刺激の少ないものから少しずつ普段の食事へ戻していきましょう。一方、アルコールやカフェイン、高脂肪食、糖分の多い飲料などは症状がある間は控えるのが目安です。血便や黒色便、強い腹痛、水分がとれない、下痢が長引くといった場合は、食事の工夫だけで様子を見ず、医療機関へ相談してください。症状が落ち着いた後も便通の乱れが続く場合は、食事や便の状態を記録し、今後の食生活を見直す手がかりにしましょう。
参考文献
消費者庁「特別用途食品たる経口補水液の適切な使用方法について(周知依頼)」
消費者庁「経口補水液ってなに?」/「ご存じですか?経口補水液の知識」
Am Fam Physician. 2014,89:180-189
JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2006,30:433-439
Eur J Gastroenterol Hepatol. 2002,14:1225-1230
NIDDK「Eating, Diet, & Nutrition for Diarrhea」
NIDDK「Symptoms & Causes of Diarrhea」
NIDDK「Treatment of Viral Gastroenteritis (“Stomach Flu”)」




















